【監査報告書における追記情報】強調事項とその他の事項

さっき見かけた緑色のコトリ、ウグイスかメジロかわからなかった!ウグイスとメジロはそっくりだけどどこが違うの?

目の周りが白いのがメジロ!
ウグイスとメジロは見た目は似てるけど、鳴き声も習性も違うよ。

じゃあ、さっきのはメジロかな。
そうそう、もうひとつわからないことがあってね、監査報告書の「その他の事項」と「その他の記載内容」は表題がそっくりだけど何が違うの?

「その他の事項」と「その他の記載内容」は、表題が似ているけど、中身は違うものだよ。
今回は、「その他の事項」を含む「追記情報」について勉強しよう。

監査報告書に「その他の事項」という区分が設けられることがあります。
「その他の事項」は監査報告書における追記情報の一種類です。
この記事では、公認会計士 のそのそ が監査報告書の追記情報とは何かをわかりやすく解説します。

この記事で学べること
  • 監査報告書における追記情報の性質
  • 強調事項
  • その他の事項
目次

監査報告書における追記情報

「その他の事項」っていうのは、監査報告書の「追記情報」の一種類なんだよ。

「追記情報」は監査意見の一貫として監査報告書に記載されるものなの?

いいや、違うよ。

追記情報
監査人が監査報告書において監査意見とは別に情報として追記するもの

追記情報は、企業の財務諸表やその監査に関して、監査人からの補足的な情報として記載されるものです。利害関係者の理解に資するために、監査人が保証の枠組みの外で、情報提供機能の発揮として記載するものになります。

追記情報は、保証機能の一貫として記載されるものではなくて、あくまでも監査人からの情報提供として記載されるものなんだよ。

追記情報を監査意見と明確に区別せずに記載してしまうと、追記情報まで保証の対象であるような誤解を利用者に与えるおそれがあります。そのため、追記情報を監査報告書に記載する場合には、別に区分を設けて、意見の表明とは明確に区別することとされています。

追記情報には次の2種類があります。

  • 強調事項
  • その他の事項

それぞれ「強調事項」「その他の事項」という見出しを付した独立の区分とするよ!

強調事項

まずは強調事項から見てみよう!

強調事項
財務諸表に適切に表示又は開示されている事項について、利用者が財務諸表を理解する基礎として重要であると監査人が判断し、当該事項を強調するため監査報告書に設ける区分

「強調事項」区分に記載する事項は、財務諸表に適切に開示されている事項なんだ。

正しく開示されているのに、なぜ監査報告書に強調事項として記載するの?

その事項について、財務諸表利用者の判断を誤らせないようにするために強調することが適当であると監査人が判断した場合には、利用者への注意喚起のために、監査報告書において重ねて記載するんだ。

監査基準では、強調事項として次の3つが例示されています。

  • 会計方針の変更
  • 重要な偶発事象
  • 重要な後発事象

財務諸表に上記の注記がされた場合に、必ず監査報告書上で追記情報として記載されるわけではないことに注意してね。

あくまで、監査人が財務諸表利用者の判断を誤らせないようにするため強調することが適当であると判断した場合に、追記情報として記載されるんだね。
強調事項を連発しすぎると、本当に強調したい事項が埋もれてしまうもんね。

重要な後発事象に関する強調事項の事例を見てみよう!

㈱タカラトミー (2023年3月期)   監査報告書より

強調事項
 重要な後発事象に記載されているとおり、会社は2023年4月18日開催の取締役会においてTOMY UK Co.,Ltd.に対して増資を行うことを決議している。
 当該事項は、当監査法人の意見に影響を及ぼすものではない。

その事項の詳細な内容を監査報告書で繰り返し記載するわけではなくて、財務諸表の注記を参照する形をとるよ。

「当該事項は監査人の意見に影響を及ぼすものではない」っていうのはどういうこと?

さっき言ったように、強調事項は保証の枠組みの外で記載される補足的情報なんだけど、強調事項を意見と区別して記載したとしても、利用者の中には、強調事項を除外事項などと誤解する人もいるかもしれないよね。

その誤解を避けるために、念には念を入れて、意見に影響するものではないってことを示しておくのか。

強調事項は、その事項が財務諸表において適切に開示されていることが前提となっています。したがって、本来除外事項として扱うべき事項を、除外事項とせずに強調事項として追記することで済ませることは認められません。

なお、ある事項が、監査上の主要な検討事項と強調事項の両方に該当する場合は、基本的には「監査上の主要な検討事項」区分に記載することになります。監査上の主要な検討事項とした事項について、監査人が強調し注意喚起することが適切と判断する場合は、それを「監査上の主要な検討事項」区分の最初に記載したり、利用者が財務諸表を理解する基礎として重要であることを示す文言を「監査上の主要な検討事項」の記載に含めたりすることで対応します。

その他の事項

次に、「その他の事項」を見てみよう!

その他の事項
財務諸表に表示又は開示されていない事項について、監査、監査人の責任又は監査報告書についての利用者の理解に関連すると監査人が判断し、当該事項を説明するため監査報告書に設ける区分

「その他の事項」区分は、そもそも財務諸表に開示する必要がない、監査に関連する事項について説明するものだよ!

監査や監査人の責任、監査報告書に係る事項は、財務諸表本体には開示されないもんね。たとえばどんなことが「その他の事項」として記載されるのかな?

「その他の事項」の具体例としては、
・前年度の財務諸表が前任監査人により監査されている場合
・前年度の財務諸表が未監査の場合
などが挙げられます。

前年度の財務諸表が前任監査人により監査されている場合の文例

その他の事項
 会社の×年×月×日をもって終了した前事業年度の財務諸表は、前任監査人によって監査されている。前任監査人は、当該財務諸表に対して×年×月×日付けで無限定適正意見を表明している。

「“その他の”事項」っていう言い回しは、“強調事項以外の”追記情報という意味合いなんだね。

そうだね。
ちなみに、最初に言ってた「“その他の”記載内容」は、“開示書類のうち財務諸表と監査報告書以外の”記載内容という意味だよ。

意味を理解しておけば、「その他の事項」と「その他の記載内容」を簡単に見分けられるようになるね。

追記情報の記載箇所

監査報告書における「強調事項」区分や「その他の事項」区分の記載箇所は、予め定められているわけではありません。当該事項の内容、及び想定利用者にとっての相対的重要性を考慮して、監査人が決定します。

もちろん、監査報告書の冒頭が「監査意見」区分、その直後が「監査意見の根拠」区分であることは動かせないよ!

◆まとめ◆

・追記情報とは、監査人が監査報告書において監査意見とは別に情報として追記するものをいう。利害関係者の理解に資するために、監査人が保証の枠組みの外で、情報提供機能の発揮として記載するものであり、「強調事項」と「その他の事項」に分類される。
・強調事項:財務諸表に適切に表示又は開示されている事項について、利用者が財務諸表を理解する基礎として重要であると監査人が判断し、当該事項を強調するため監査報告書に設ける区分
・その他の事項:財務諸表に表示又は開示されていない事項について、監査、監査人の責任又は監査報告書についての利用者の理解に関連すると監査人が判断し、当該事項を説明するため監査報告書に設ける区分

今日はいろんな論点が目白押しで、勉強になったな~。

メジロは、押しあうように並んで枝にとまる習性があるんだ。だから、ものごとが集中する様子を「目白押し」っていうんだよ。

へぇ!それが今日一番の勉強になった!

24年3月発刊の新版だよ!

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