
きみの自転車、ちょっとぐらついていたから調整しておいたよ。乗って確かめてみて。



ありがとう!
でも、調整してくれたきみが乗って確かめたほうがいいんじゃないかな。どこを調整したか知っている人が試し乗りしたほうが、気になるところを確認しやすいよね。



たまに鋭いこと言うね。調整と試し乗りは別々の作業だけれど、一体的に行うほうが効果的かつ効率的だね。
これは、内部統制監査と財務諸表監査を同じ監査人が一体的に行うことと似ているかもしれないよ。
我が国では、金融商品取引法により、上場会社等を対象に、財務報告に係る内部統制の経営者による評価と公認会計士等による監査が義務づけられています。
内部統制報告制度における内部統制監査は、財務諸表監査と同一の監査人により、一体的に行われます。
この記事では、公認会計士 のそのそ が、内部統制監査と財務諸表監査の関係をわかりやすく解説します。
- 内部統制監査と財務諸表監査が同一の監査人により一体的に行われる理由
- 内部統制監査と財務諸表監査の相互関係
内部統制監査と財務諸表監査は別の監査
我が国では、金融商品取引法により、上場会社等を対象に、財務報告に係る内部統制の経営者による評価と公認会計士等による監査が義務づけられています。したがって、上場会社等は、財務諸表監査に加えて、内部統制監査も受けることになります。



両者の監査の違いを復習しておこう。
| 監査の種類 | 何について意見を表明するか |
|---|---|
| 財務諸表監査 | 経営者の作成した財務諸表が、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を全ての重要な点において適正に表示しているかどうか |
| 内部統制監査 | 経営者が作成した内部統制報告書が、一般に公正妥当と認められる内部統制の評価の基準に準拠して、財務報告に係る内部統制の有効性の評価結果をすべての重要な点において適正に表示しているかどうか |



財務諸表監査では、直接の監査対象は『財務諸表』なのに対して、内部統制監査では、直接の監査対象は『内部統制報告書』なんだったね。
内部統制監査と財務諸表監査は、目的や意見表明の対象が異なる別個の監査です。
しかし、両者はまったく別々に行われるわけではありません。内部統制監査は、財務諸表監査と同じ監査人により、一体的に行われるものとされています。
なぜ同じ監査人が担当するのか
内部統制監査は、原則として、財務諸表監査と同一の監査人により、財務諸表監査と一体となって行われます。ここでいう「同一の監査人」とは、監査事務所だけでなく、業務執行社員も同一であることを意味します。



同じ監査法人ならOK、というわけではないんだね。
内部統制監査と財務諸表監査では、会社の事業内容、業務プロセス、会計処理、財務報告に係る内部統制など、監査人が理解する事項に重なる部分が多くあります。
たとえば、財務諸表監査において売上取引に係る重要な虚偽表示リスクを識別・評価する際、監査人は、売上取引がどのような流れで処理され、どのような承認や照合が行われているかといった、売上取引に関する内部統制を理解することがあります。
一方、内部統制監査においても、経営者が売上取引に関する内部統制をどのように評価したのかを検討するため、売上取引の流れや、承認・照合などの内部統制に関する情報を監査人が確認することがあります。
このように、財務諸表監査と内部統制監査では、監査人が利用する情報や監査証拠に共通する部分があります。



だから、同じ監査人が両者を一体的に実施すれば、一方の監査で得た知識や監査証拠を、もう一方の監査でも活用できるんだ。



自転車の調整をした人が、そのまま試し乗りをすれば、どこを注意して確認すればよいかわかりやすい、というのと似ているね。
仮に、内部統制監査と財務諸表監査を別々の監査人が担当すると、それぞれの監査人が会社や業務プロセスを別々に理解し、似たような監査手続を重複して行うことになりかねません。これは、監査コストの増大にもつながります。
そこで、両者の監査を効果的かつ効率的に行うため、同一の監査人が内部統制監査と財務諸表監査を一体的に実施することが求められています。
監査証拠を相互に利用できる
内部統制監査と財務諸表監査が一体的に行われることで、一方の監査で得られた監査証拠を、もう一方の監査でも利用できる場合があります。
具体的には、内部統制監査の過程で得られた監査証拠は、財務諸表監査における内部統制の評価のための監査証拠として利用されます。また、財務諸表監査の過程で得られた監査証拠も、内部統制監査の監査証拠として利用されることがあります。



一方通行ではなく、双方向なんだね。
たとえば、内部統制監査において、売上取引に関する内部統制についての経営者の評価を検討し、監査人が十分かつ適切な監査証拠を入手したとします。この監査証拠は、財務諸表監査において、売上取引に関する内部統制をどのように評価するかを検討する際にも役立ちます。
反対に、財務諸表監査の過程で、承認手続の不備に関する事実が見つかった場合には、その情報は、内部統制監査において、経営者による内部統制の評価結果が適切かどうかを監査人が検討する際にも考慮することになります。



自転車の調整で気づいたことは試し乗りに役立つし、試し乗りで気づいたことは調整の見直しに役立つ、という感じだね。
ただし、一方の監査で得た監査証拠を利用できるといっても、それぞれの監査の目的や検討事項は異なります。そのため、監査人は、入手した監査証拠が、それぞれの監査における判断の基礎として十分かつ適切かどうかを検討する必要があります。



内部統制監査と財務諸表監査は別個の監査だから、監査証拠を相互に利用しつつも、それぞれの監査に必要な手続や判断は区別して行うということだよ。
両者の監査は相互に影響する
内部統制監査と財務諸表監査では、監査証拠を相互に利用できるだけでなく、一方の監査で得られた結果や知識が、もう一方の監査に影響することがあります。
たとえば、売上取引に関する内部統制に開示すべき重要な不備があり、経営者が財務報告に係る内部統制は有効でないと評価し、監査人もその評価を適切と判断している場合を考えます。この場合、財務諸表監査において、監査人は、その内部統制に依拠した通常の試査による監査を実施することはできないと考えられます。



内部統制に依拠した通常の試査による監査ができるのは、監査人が、その内部統制は一定期間にわたって有効に運用されており、監査上それに依拠できると判断しているからなんだ。内部統制に大きな問題があるのに、その内部統制を前提にして試査による監査を進めるわけにはいかないよね。
この場合、監査人は、関連する勘定科目や取引について、実証手続の範囲を拡大し、精査を実施するなどの対応を検討することが考えられます。
一方、財務諸表監査で得た知識も、内部統制監査に影響します。
たとえば、財務諸表監査の過程で、経営者による内部統制評価の範囲に含まれていない業務プロセスに内部統制の不備があることに、監査人が気づく場合があります。このような場合、監査人は、その不備が内部統制報告制度上の評価範囲や評価結果にどのような影響を及ぼすかを検討する必要があります。必要に応じて、経営者と協議し、経営者による評価範囲の見直しや追加的な評価手続が必要になることもあります。
ただし、内部統制監査と財務諸表監査の結論は、常に連動するわけではありません。
内部統制に開示すべき重要な不備があり、財務報告に係る内部統制が有効でない場合でも、それだけで直ちに財務諸表に重要な虚偽表示があると決まるわけではありません。監査人が追加的な監査手続を実施し、財務諸表について十分かつ適切な監査証拠を入手できれば、財務諸表監査では無限定適正意見が表明されることもあります。



反対に、財務諸表監査で重要な虚偽表示が見つかった場合でも、それが直ちに開示すべき重要な不備を意味するわけではないよ。もちろん、その重要な虚偽表示が、内部統制の不備によって発生したものではないか、また、その不備が財務報告に重要な影響を及ぼす可能性が高いものではないかを検討する必要はあるけれど。
このように、内部統制監査と財務諸表監査は、それぞれ別個の監査でありながら、監査の過程で得た結果や知識が相互に影響し合う関係にあります。
監査報告書も一体型で作成
内部統制監査と財務諸表監査は、同一の監査人により一体的に行われるため、内部統制監査報告書についても、原則として、財務諸表監査の監査報告書と合わせて記載することとされています。



監査の実施だけでなく、監査報告書の作成も一体型になるんだね。



そうだよ。ただし、監査報告書が一体型で作成されるといっても、内部統制監査の意見と財務諸表監査の意見は、それぞれ別個に表明されることに注意しよう!
内部統制監査報告書と財務諸表監査の監査報告書の関係については、別記事で詳しく説明しています。
◆まとめ◆
・内部統制監査と財務諸表監査は、同一の監査人により一体的に行われる。
・内部統制監査と財務諸表監査では、監査証拠を相互に利用できる。
・内部統制監査と財務諸表監査は、それぞれの結果や知識が相互に影響する関係にある。



自転車の調整も試し乗りも完了!さあ、乗ってみて!



その……、言いにくいんだけど……。
実は、補助輪を外したら、乗れなくなっちゃったんだ!



そんな重大な不備があるなら、最初に言ってくれよ!



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新版では、従来の6原理に加え、7つ目の原理も扱われているよ。










